ホームレス狩り

もう俺はダメだ。ホームレス狩りの季節だ。
あの公園のブルーシートの屋根が連なる村へ向かって歩き出す。ふらふらと幽霊のような足取りで。
連中を油断させて隙を作る為に、酒や食べ物やタバコを買い込んだ。TVの取材と語って神妙な面持ちで寄っていき、世間話の輪にするりと入る。
ここいら辺はホームレス狩りのニュースが報道されたりして物騒だね、おじさん。
ああ、恐ろしいことだ。人の命をなんだと思ってやがるんだ。あんちゃんも気を付けた方がいいぞ。
黒ずんだ顔が口を大きく開けて臭気をまき散らし、時折怒ったような、しかしいきなりニヤついたりして、気味の悪い副話術の人形のように切り返してくる。
すると年長の浮浪者が、こうして皆で一つの鍋を炊き出さなけりゃ、飯を食うにも困るのになぁ、などと言いながら、でかいずんどう鍋を汚い棒切れでかき回した。
さあ、あんたも食えよ。
差し出された薄汚いプラスチック制の器を手に取り、ひと口すする。
暖かい。
明かりに群がる羽虫のように、冷気の中から温まろうと浮浪者達が集まってくる。
しかし何の鍋なんだい?魚を入れるなら鱗ぐらい取ればいいのに。鱗のでかい魚だな。
白く濁ったスープに箸を突っ込んでみるとずるりと骨付きの肉が取り出され、分かれた指が鳥の足のように見える。
この皮の感触は鶏肉かい?だけど鳥にしちゃうぶげが黒いな。
浮浪者達はニヤニヤ、ニヤニヤしながら、静かに鍋を食べ続けている。
豚にこんな大きな脳みそがあったかな?牛にしてもでか過ぎるようだ。
こいつはよっぽど賢い動物なんでしょうね?