<span style="font-weight:bold;font-size:large;">転職のはなし</span>
この度転職することになった。
アルバイトで渋谷のIT企業に1年半勤めたが、この年齢で未来の無い事をだらだら続けられない。
何もかもごまかしの利かない年齢である。
同世代の友達が結婚する。
同世代の友達が子供を生む。
同世代の友達が離婚する。
そして私自身の親は、祖父母が亡くなってから急に老け込んだように感じる。
自分が親になってからそういった感覚がやってくるかと思っていたが、人生の三分の一を過ぎた今は、時の残酷さを改めて思い知る。
転職をする事で私を一番苦しめたのは、恩義をいただいた現在の上長に対してどのような態度をとればいいのかだった。
決して柄のいい人間ばかりいるわけではない今の会社で、私にいろいろと仕事の心を教え込んでくれた。
いろいろな尊敬できる人がいる。
本当に柄が悪いが、とても情に厚い。厳しく人を叱って使い、その倍以上に自分自身を厳しく律する方。
論理的な思考の先生であり、仕事の論理を実践で示してくれた方。
様々な啓蒙を与えてくださった方々がいるが、恐らく一番私のわがままを許してくれたあの上司が一番恩義があるだろう。
その人は優しいが故に甘く見られがちだった。
自分に甘い部分もあるが、仕事をする事が生きていく間ずっとつづく事をよく理解していた人だ。
私は退職の意思をその人に告げる前に、私の勤怠を直接管理している上長に告げた。
なぜなら、私は少なからずその優しい上司を疎んじていたからだ。
年齢が一回り離れているその人は、私から見るとうるさいおじさんだった。
転職自体にもあまり良い感想を持たない。
例え今の会社が最低でも、「嫌だ」という理由で転職する事を嫌うような。
だからどう切り出しても面白くない展開になりそうだった。
そして何より、私はその人の正論で転職への意思を揺るがされるのが怖かった。
今までいろいろな啓蒙を与えながらも暖かく私を指導してくださった方だったから、きっと今回も私にとって本当は気づきたくない現実をまざまざと突きつけ、優しく諭してくるのじゃないだろうかと思っっていた。
そしていよいよ話さなければどうにも事が前に進まなくなってしまった時。
その人が私にくれた言葉は、
「弱点があるができない人間じゃないから頑張れ」
だった。
それまで私の中にあったその人へのわだかまりは一気に吹き飛んだ。
私は泣き上戸なので、その時は涙が湧いてくるのをこらえるのに必死だった。
この出来事は私に大きな発見と新たな啓蒙をもたらした。
「人に対する好き嫌いの何と小さいことか」を
そして
「感謝する事の大切さ」と
「気づかないことの悲しさ」を。
これから色々な人に出会うだろう。
派手な人だったり、暗い人だったり。
気持ち悪い人だったり、よくわかんない人だったり。
いろんな人がいる。
けど、その「色々」も、
それぞれの人の一部を見てるだけなんだ。
見え易い所が見えているだけなんだ。
肩の力を抜いていこう。
人はそんなに怖くないんだから。